
一般財団法人インターナショナル・ブラインドフットボール・ファウンデーション(以下、IBF Foundation)は、2024年11月17日から22日まで、スペイン・マドリードにて、視覚障がい者を対象とした、次世代リーダーの発掘、育成を目的とした「Global Leadership Camp for Visually impaired people, Supported by Skylight」(以下、グローバルリーダーシップキャンプ)の第2回を開催しました。
開催の目的
「各国における視覚障がい者を取り巻く社会環境の改善、変革を促すため、視覚障がい当事者のうち、将来のリーダーとして活躍する人材を発掘、育成する」
視覚障がいにまつわる社会課題はそれぞれの国・地域に広く存在し、各国共通の課題もあれば、異なった課題も多くあります。その課題を解決していくためには、現地で課題解決に取り組む人材が不可欠であると私たちは考えています。
キャンプ概要
開催都市:スペイン・マドリード
日程: 2024年11月17日-22日
キャンプ参加者数:8名(視覚障がい当事者/各国より参加)
協賛社:スカイライト コンサルティング社、knots associates社
プログラム協力:ONCE(スペイン視覚障害者協会)
参加者の選考
リーダーシップスキルを身に着け、将来的にどういったことを成し遂げたいか、どういったプロジェクトを実施したいか、などの考えを書類として提出を求め、約2週間の募集期間で、世界中から39件の応募がありました。書類審査とオンライン面談を経て、最終的に8名を参加者として選定しました。
参加者の顔ぶれ
参加者数は第1回と同じ8名。インド、イラク、ヨルダン、ブルガリア、アルゼンチン、ニカラグア、コロンビア、ガーナから参加し、男性3名、女性5名となりました。年齢は21歳から41歳。視覚障がい者団体職員、企業経営者、スタートアップとの協業する大学院生、政府機関職員など。11月17日に各自が一人でマドリード空港に到着。
ONCEと会場
第1回に続き、スペインの視覚障がい者協会(ONCE、Organización Nacional de Ciegos Españoles)の協力を得られ、グループ企業が経営する会場・宿泊施設の提供を受けました。宿泊施設は第1回とは異なる場所でしたが、視覚障がい者にも配慮した施設やスタッフであることは変わりませんでした。
プログラム構成
参加者は、自分自身が将来実現したいプロジェクト(”My project”と定義)を事前課題として提出していました。キャンプ中の講義やビジット、体験や、参加者同士のピアコーチングを通じて、My projectに磨きをかけて、最終日にプレゼンテーションを行いました。
プログラムとしては、リーダーシップについて考える体験や講義、ゲストスピーカーを受ける枠と、プロジェクトのブラッシュアップのヒントを得るための講義、ビジット、ディスカッションを行う枠を設ける形で構成しました。
【Day1】
・オリエンテーション
・自己紹介
・アイスブレイク
集合日の夕方に、世界各地から集まった参加者がお互いを知る時間を設けました。
【Day2】
・アイデアソン
モビリティ、就労、アクセシビリティ事前に希望したテーマで二つのグループに分けて、複数回に渡って議論。主な目的は、各自の背景や考え方を理解してもらう関係づくり。
・スカイライトコンサルティング社、小川氏によるセッション
リーダーシップ、ステークホルダーとの関わり方など、ビジネスで不可欠な知識を講義
・ゲストスピーカー講演
Jose Soares from Integrated Dreams
インテグレーテッド・ドリームスは、ポルトガルのリスボンを拠点とする非営利団体で、スポーツ界における障がい者のインクルージョンを目指して活動している。FOOTBALL FOR ALL LEADERSHIP PROGRAMMEなど様々な活動の内容や成果を紹介し、参加者をインスパイアした。
Joseからのコメント
「グローバルリーダーシップキャンプの参加者と交流し、私の仕事の一部を分かち合うことができたのは、またとない経験でした。 参加者たちのモチベーションの高さは他に類を見ないもので、彼らと午後のひとときを共に学ぶ機会を持てたことは、この上なく貴重な経験となりました。 是非また来たいです」
Mônica Esperidiao Hasenclever from World Football Summit
2016年から始まったワールドフットボールサミットは、サッカー界を変革するリーダーが集まるカンファレンス。障がい者サッカーの包摂や女性の活躍なども含む取り組み、規模を紹介した。
【Day3】
・ワークショップ
ブラインドサッカーのボールなどを用いたワークショップ。チームワークを育んだり、コミュニケーションについて学ぶ。
・ONCE Hub 訪問
障がい者が就労のために訓練を受ける場を訪れたり、障がい者向けの様々な器具を体験。なぜ、このような取り組みを行っているのか、などONCEの支援についても学ぶ。
・Dragones de Lavapiesでフィールドワーク
マドリード・ラヴァピエス地区のコミュニティサッカークラブを訪問。視覚障がい当事者が創設者、運営責任者として、障がい者に限らず広く地域コミュニティにスポーツ機会を提供するローカルクラブ。代表のスピーチを聞いた。
【Day4】
・リーダーシップとは何かを考えるピアコーチング
・Illunion 本部を訪問
ONCEソーシャルグループにおいて、ビジネス部門を担当する部署。参加者が宿泊しているホテルもこの部署が経営している。クリーニングやメディアなど、さまざまな事業を展開していることの説明を受け、責任者から話を聞いた。ニュースを制作・放送するスタジオが、その会場となった。
・My projectについて中間発表
グループで発表。質問、意見、アドバイスを受ける。
・ONCEミュージアム体験
展示物に触れられる博物館。視覚に障害のあるアーティストの作品も展示されている。
【Day5】
・Cross Boader Pitch Event
Ashirase 日本発のベンチャー企業。靴装着型の振動ナビゲーションデバイスを紹介
ONCE 視覚障がい者を対象としたスタートアップ支援、アントレプレナーシップ支援を紹介
Institute de La Visionフランスの視覚研究所がどんな研究をしているかを紹介
・My projectについて考えるグループワーク
【Day6】
・最終プレゼンテーション
「自分自身のリーダーシップとは」(Who I am)
「自身のリーダーシップを発揮して成し遂げたいことは」(What I want to do)
について、学び考え、ブラッシュをしたうえで、最終日に宣言としてのプレゼンを行った。My projectがベースになっている。
参加者が発表した内容
Zainab Jalal Ahmed Al-Rikabi (Iraq):リーダーという立場に関わらず、誰でもリーダーシップを発揮できると考える。チームの資金調達を目標に、コーチの給与や設備費、試合の交通費などを賄うため、非営利団体や企業からの支援を募る。
Hasan Tayem(Jordan):包括性とエンパワーメントを重視し、適応力のあるリーダーシップを目指す。視覚障がい者のランナーがガイドを見つけにくい課題に対し、ランナーとガイドを結びつけるネットワークを構築。スポーツへのアクセス促進と意識向上を目指す。
Elena Karamanska (Bulgaria):変革型とサーバントリーダーシップを実践し、戦略的思考とネットワーキングを活用。革新的なアイデアで有意義な変化を推進し、チームを支援する環境を整える。アクセシビリティ専門のコンサル会社を設立し、企業と専門家をつなぐ役割を担う。
Lena Fernandez Calienes Saavedra (Argentina):参加型リーダーシップを重視し、人々のニーズに耳を傾ける。視覚障がい者の健康と栄養に関する情報不足の課題に取り組み、スポーツパフォーマンスや生活の質の向上を目指す。自律性を尊重し、食品選択の改善を支援する戦略を推進。
Juan Luis Sevilla Iglesias (Nicaragua):ニカラグアで視覚障害者の労働包摂を促進するプロジェクトを推進。トレーニング、雇用支援、起業支援の3分野で活動し、視覚障害者の能力を活かす道を開く。雇用契約の取得を支援し、起業家精神の育成にも取り組む。
Joseph Seyena-Susu (Ghana):変革型かつ奉仕型のリーダーシップを発揮し、適応性を活かして成果を追求。ICTと職業訓練を通じて3年間で300人の障害者の経済的エンパワーメントを目指す。紛争解決の手段としてADR(裁判外紛争解決)の紹介コースを提供。視覚障害者向けの触覚体験ができる博物館設立も検討。
Diana Marcela Jimenez Barbosa (Colombia):コロンビア出身で、8年以上視覚障害者のリーダーとして活動。水平型リーダーシップを重視し、「問題のない教育」というプロジェクトで視覚障害者の高等教育アクセス改善に取り組む。入学試験のモデル設計や経済支援の推進、奨学金制度の要件緩和を目指す。
参加者の声
「チームワークの強化や、障害を持つ人々に対する新たなインクルージョン戦略について学びました。視覚障がい者と協働するための多くのアイデアを得ることができ、実践に取り入れる方法も考えました。また、スポーツ、教育、雇用といった分野で障害者の社会参加を推進するうえで、共同作業の重要性を改めて実感しました。さらに、ONCEが導入している技術の進歩が、公平な社会の実現に向けた有効な手段となることも学びました。キャンプのメンバーから得た知見は非常に貴重であり、それぞれ異なる視点から視覚障がい者との関わり方を学ぶことができました」
「リーダーとリーダーシップの違い、優れたリーダーに求められる資質、コミュニケーションや傾聴、フィードバックの重要性、そしてチームワークや分析のスキルについて学びました。また、新たな人々とのネットワークを築き、アイデアを共有できたことも貴重な経験でした。異なる文化や経験を持つ仲間との交流を通じて、多くの学びがありました。キャンプは本当に素晴らしい時間でした」
「キャンプのすべての参加者との出会いは、非常に有意義なものでした。多様な経験や背景を持つ人々と交流できたことは、とても刺激的でした。また、すでに実践している人々の話を聞くことで、多くの学びや新たな視点を得ることができました。最終プレゼンテーションでは、キャンプのコーディネーターやゲストからさらに多くのフィードバックを受け取る機会があると、より充実した学びにつながると感じました」