2022年11月より募集が始まった視覚障がい者のスポーツ以外の課題を解決するための新しい助成金プログラムVisually Impaired Support Grant Programmeに選ばれた5団体が、2023年6月までに、それぞれのプロジェクトを終了しました。視覚障害者が自立的な生活をするために欠かせない用具の購入やそれらの用具を使うための研修会の開催、支援が届きにくかった人々へのアクセスがかなうなどの成果が生まれました。
プロジェクトは、新規に実施されたものに加え、各団体が持つ既存プロジェクトを助成金によって支援するもの、そして、団体運営機能を補完するものがありました。主な対象者は、視覚障害や視覚障害を含む重複障害を持つ人々の中でも、とりわけ青少年や女性、子どもなど社会的に弱い立場に晒されやすい人たちです。
以下、各団体のプロジェクトの成果を簡潔に紹介します。
●Deafblind association of Honduras
ホンジュラスのコルテス県サン・ペドロ・スーラ市の5歳から20歳までの男女63名、21歳から60歳までの男女8名(視覚障害、視覚聴覚障害を含む)を対象に、点字ディスプレイの使用訓練を実施しました。これによって情報アクセスが広がり、就学や就労機会の増加が期待されます。点字ディスプレイはアメリカからの輸入に頼っており、高価であることからも、個人で入手することは難しくなっています。併せて白杖を新たに購入し、改めて正しい使い方を講習しました。
※白杖…視覚障害者が移動する際、障壁物などを事前に察知し行き先をガイドするための杖
※点字ディスプレイ…文字情報を立体的な点字に変換する機器。PCやスマホと接続し、情報を得ることが可能
●FOOTBALL ASSOCIATION FOR THE BLIND OF BENGAL
インドの西ベンガル州コルカタ市の9歳から15歳までの男子70名、ブラインドサッカー選手25名(うち女性5名)を対象に、白杖と点字器を配布し、使い方を訓練しました。他に紙やアルファベット数字表など、学習に必要な用具を配布しました。学校現場からは、基本的な学用品が足りていないため、このような供与をもっと増やして欲しいというリクエストがありました。
※点字器…点字を書くための定規状の道具
●Fundación Luis Braille de Honduras
ホンジュラスのコルテス県サン・ペドロ・スーラ市の5歳から60歳までの男女45名が対象となりました。団体の教育施設に点字プリンターが導入されたことにより、教科書や仕事に必要な情報の点字化が日常的に実施できるようになりました。これによって、得られる情報量が格段に増えました。これら成果は対象となった人たちだけではなく、その家族にも恩恵をもたらしています。一つ目の団体同様に、この機器もアメリカからの輸入に頼っており、高価な上に入手が困難になっています。
※点字プリンター…アルファベット入力すると点字変換して出力する機器
●Nigeria Association of the Blind (NAB)
ナイジェリアのラゴス市の22歳から52歳までの女性10名を対象に、点字ディスプレイと白杖の使用方法を訓練しました。ナイジェリアは家父長制社会が根強く、女性が社会的に責任あるポジションに就くことが難しくなっています。さらに、視覚障害女性と健常者女性ではさらにその差は大きく、情報格差や移動制限による障壁を低減するために本ワークショップが実施されました。
●ZANZIBAR NATIONAL ASSOCIATION OF THE BLIND (ZANAB)
タンザニアのザンジバル島に拠点を持つ団体の運営支援のために、PCやプリンター、オフィス文具を購入しました。団体支部のオフィスではOA機器が不足しており、視覚障害者支援業務に支障がでていました。今回のOA機器導入によって11の支部の運営が支援され、支部が抱える18歳から75歳までの男女536名の支援活動に貢献しました。
視覚障害者を支援するためのツールはすでに数多く存在していますが、製品そのものが高価であることや、多くの国では販売経路が限られており、個人での入手が困難である場合が多いです。各受益団体は、団体が持つ支援技術や知見、地の利を存分に発揮して、視覚障害者に直接的に確実に届く支援を行いました。各受益団体は日頃より、それらの困難に直面する視覚障害者一人ひとりへ支援が行き届くよう、草の根的に活動しています。
今回初めてスポーツに直接関わらない活動を助成したIBF Foundationは、これらの団体と緊密に連携しながら、これからもその活動を支援していきます。