お知らせ

視覚に障がいを持つリーダー人材を世界から発掘し育成する「Global Leadership Camp for Visually Impaired people, supported by Skylight」を初開催

 

【なぜ開催するのか】

「各国における視覚障がい者を取り巻く社会環境の改善、変革を促すため、視覚障がい当事者のうち、将来のリーダーとして活躍する人材を発掘、育成する」

視覚障がいにまつわる社会課題はそれぞれの国・地域に広く存在し、各国共通の課題もあれば、異なった課題も多くあります。その課題を解決していくためには、現地で課題解決に取り組む人材が不可欠と私たちは考えています。
グローバルリーダーシップキャンプは、現地で活動する視覚障がい当事者のリーダーを発掘し、そのリーダーシップスキルを向上することを目的としています。今回が我々として、初の試みです。

 

【キャンプ概要】

開催都市:スペイン・マドリード
日程: 2024年3月10日-15日
キャンプ参加者数:8名(視覚障がい当事者/各国より参加)
視察参加者数:3社4名(リクルート社、knots associates社、Ashirase社)
協賛社:スカイライト コンサルティング社
プログラム協力:ONCE(スペイン視覚障害者協会)

 

【参加者の選考】

GLCは参加者の渡航費やキャンプ期間中の基本的な滞在費(宿泊費・食費等)をすべて運営側が負担すること、応募者は英語での読書きのほかディスカッションやプレゼンテーションが可能であること、オフィスソフトウェアなど基本的なPCスキルを有すること、開催地の空港まで一人で来ることができること、などを要件として募集しました。
IBF Foundationはこれまでのブラインドサッカー大会支援や用具の提供、助成金による支援などから、世界各国の障がい者スポーツ団体や視覚障がい者支援団体との繋がりを持っており、そのネットワークを通じて参加者募集の案内を送りました。
リーダーシップスキルを身に着け、将来的にどういったことを成し遂げたいか、どういったプロジェクトを実施したいか、などの考えを書類として提出を求め、約2週間の募集期間で、世界中から20件の応募がありました。書類審査とオンライン面談を経て、最終的に8名を参加者として選定しました。

 

【参加者の顔ぶれ】

8名はインド、日本、ウガンダ、アルゼンチン、フランス、スペインから参加。男性6名女性2名で、年齢は19歳から35歳。バックグラウンドは、地域の視覚障がい者コミュニティ・組織で働いていたり、情報アクセシビリティやインクルーシブについて研究や活動を行っている参加者が多い傾向にありました。
3月10日の合流日、スペイン以外からの参加者6名はマドリード空港までそれぞれ一人で到着。事前に各航空会社に対し、視覚障がいがあること、出発空港からマドリード空港のゲートまでアシスタントを手配していたため、全盲の参加者も空港スタッフらからサポートを受けて移動することができました。

【ONCEと会場】

スペインの視覚障がい者協会(ONCE、Organización Nacional de Ciegos Españoles)の協力を得られたことが、このキャンプの質を高めるのに、非常に大きかったです。ONCEはスペインでの宝くじ販売のライセンスを持ち、販売員などとして視覚障がい者やそのほかの障がい者の雇用を創出するほか、グループ企業ではホテルや食品会社など様々な事業を行い、障がい者雇用と、インクルーシブなサービスの提供を行っています。スペイン国内企業としては4番目に多い、7万人以上の雇用を生み出しています。
キャンプは、ONCEのグループが経営するイルニオンホテルを会場・宿泊場所として提供を受けました。障がいのある人もない人も快適にすごせるホテルで、導線やレイアウトは視覚障がい者が一人でも歩き回りやすい。また全スタッフは障がいのある人へのサポートについて訓練を受けており、ホテルスタッフにサポートをしてもらいながら、ホテル内を思いのままに移動する参加者もいました。

 

【プログラムの構成】

参加者は応募段階で、3年後に実現を目指すプロジェクトについて、事前課題として小論文を提出していました。キャンプ中の各講義や体験を通じて、達成したいプロジェクト、成し遂げたいことをブラッシュアップし、最終日にプレゼンテーションを行いました。
プロジェクトや成し遂げたいことのアウトカムは何なのか、ステークホルダーはどんな人・組織で、どういう価値の交換があるのか、などを理論と実践の両面で学ぶプログラムを構成しました。
視覚障がい者がリーダーとなるために必要な資質を、リーダーシップの発揮、チャレンジ精神、目標設定能力、チームで成果を出す経験の四つと考え、それを育む内容をプログラムに組み込みました。

 

【日本からのオブザーバー、メンター】

日本から3社4名の企業の担当者が、このプログラムを視察するために現地を訪問していました。彼らからのプレゼンテーションやワークショップで得たインプットも、参加者のリーダーシップを育む助けとなりました。また、彼らは、参加者のプロジェクトやプレゼンテーションをブラッシュアップする上でのメンターも務めました。オブザーバーも連日、視覚障がい者と接する中で、自分たちの事業についてインサイトやモチベーションなど得るものが多くありました。

【Day1】

イントロダクション

リーダーシップと想いの分析に焦点を当てた教育セッション

参加者が個々に設定した3年後に実現を目指すプロジェクトについて、アウトカム(目的)、アウトプット(成果)、アクション(行動)の三つの要素を基に再考

砲丸投げ、円盤投げ(視覚に障がいのあるクラス)のパラリンピック金メダリスト、David Casinos氏による「The sun comes out every day」をテーマにしたインスピレーショントーク

Ashirase社の製品を体験し、参加者がそれぞれの状況や背景を踏まえた上でプロダクトに関するフィードバックを提供

【Day 2】

参加者とオブザーバーがチームを組み、マドリード市内を散策。未知の環境への適応。

ONCE財団が運営する、コワーキングスペース兼障がい者向けのデジタル技術とテクノロジー関連職種に特化した訓練プログラムを提供する施設を視察。

Dragones de Lavapiesマドリード・ラヴァピエス地区のコミュニティサッカークラブを訪問。視覚障がい当事者が創設者、運営責任者として、障がい者に限らず広く地域コミュニティにスポーツ機会を提供するローカルクラブ。代表のスピーチを聞きました。

ブラインドサッカーのボールを使った、チームビルディングのプロセスを体験するワークショップを実施。オブザーバーも参加し、晴眼者と視覚障がい者が協力してチーム力を高めました。

【Day3】

リクルートの福田氏による「Effective team dynamics」およびknots associatesの渡辺氏による「System thinking」のプレゼンテーション。参加者は、与えられたインプットをもとに、個々の3年後の目標に向けたプロジェクトや課題解決の取り組みの具体的なアウトカム、アウトプット、およびアクションプランを策定。

Integrated Dreamsの代表、José Soares氏による“Leading the way in Football for All”と題したインスピレーショントーク。スポーツ業界で障がい者が直面する障壁を克服することを目的とするNPO。参加者からの質問に対し、具体的なアドバイスを送りました。

参加者は、最終プレゼンテーションに向けて、個々のプロジェクトの進捗状況を報告

【Day4】

ONCEが運営するミュージアムを訪問。視覚障がい者の歴史に関する資料や文献、視覚障がい者によるアート作品や、スペイン国内外の重要建築物・記念碑の模型などに触れることができました。

Ashirase社の石井氏による製品開発の背景とビジネス戦略に関するプレゼンテーション。スカイライトコンサルティングの羽物氏から、障がい者スポーツへの投資とイノベーションハブに関する将来計画を紹介。参加者は自身のプロジェクトが企業とどのように価値を生み出し、交換するかについて考察しました。

最終プレゼンテーションに向けたプロジェクトのブラッシュアップと発表の準備

【Day5】

8名の参加者がそれぞれ、3年後に実現を目指すプロジェクトについて5分間のプレゼンテーションと3分間の質疑応答。プログラムで学んだ「スキル&ナレッジ」「体験型ワーク」「インスピレーショントーク」などの要素を統合し、ロジックモデルに基づいて計画されたアウトカム、アウトプット、アクション(およびインプット)に焦点を当てて発表。プレゼンテーション技術と内容の両面にわたって具体的なフィードバックが提供され、実行していく上でのアドバイスも受けました。

【参加者のプレゼンテーションのテーマ】

A) 社会包摂とピアサポートの促進
B) 地方と都市における視覚障がい者への教育格差を解消し、視覚障がい者がより広い分野で活躍できる社会を作る
C) 自身の活動地域での、ブラインドサッカーへのアクセスの改善と視覚障がい者の文化的活動への認知度の向上
D) 視覚障がい者支援団体・企業で、通訳として貢献する
E) I. 一般校に通うスペインの視覚障がい児童とその家族の身体・精神的なウェルビーイングの改善
II. 視覚障がい児童にロールモデルを提供し、視覚障がい者として自立した充実した生活を築く方法を示す
III. 視覚障がい者によるリーダーシップを奨励する
F) I. 3年後までに多くの視覚障がい者が福祉機器に関する知識と使い方を身に着ける
II. 地域・国内・国際大会に出場できる女子ブラインドサッカーチームを8つ創設、女子の大会を開催する
G) I. 視覚障がい児童が自身の命を守るために不可欠な水泳技術を学び、洪水などによる災害から身を守れるようにする
II. スポーツを通じて視覚障害に対する社会的偏見をなくし、当事者に対してポジティブな社会を築く
H) スポーツ、インフラ、自活および公共サービスの分野において障がい者の包摂の推進

【参加者の声】

アンケートでは、平均してすべての項目で5点満点中4点以上の評価となりました。NPS評価は、100(全員推奨者)。特にキャンプで得たネットワーク(4.7)、チームで成果を出す経験(4.55)、に対し、高い評価を得ました。

「リーダーとしてのコミュニケーションスキルや、システムシンキングなど専門的なことも学ぶことができました」

「どのようなリーダーであるべきか、インスピレーションの与え方や、スポーツをいかにビジネスに組み込むかを学びました」

「キャンプを通して自分に自信を持つことができました」

「将来、私たちは多くの問題で協力し、互いに支えあることができるようになると思います。それが私にとって今回一番大切なことでした」

 

【オブザーバーの声】

スカイライト コンサルティング株式会社 代表取締役 羽物 俊樹様
「オブザーバーで参加した方は必ずしも障がい者の方とたくさん接していない方も多くて、障がい者をサポートする、あるいは障がい者が考えを自ら表明するということ自体が気づきになっていたと思います。障がい者の中にもいろいろなタイプがいて、それがいろいろな形で出てくるのを見ることによって、いろいろなサポート、いろいろな可能性があることに気づけたのではないかと思っています」

knots associates株式会社 取締役/COO 渡辺 今日子様
「目が見えない方たちと一緒に過ごしたのは初めての体験だったので、今までの自分の常識は何だったのだろうというくらいの衝撃があり、わかっていたつもりでいたダイバーシティやインクルージョンの概念が覆りました」

株式会社Ashirase 執行責任者/COO 石井 貴幸様
「気づきとしては、実際に彼らに私たちのサービスを試していただいて、(世界各国から参加した)彼らの持っている課題に対して、僕たちがちゃんと解決できそうだということが見えてきました。弊社は日本のスタートアップであり日本の顧客がいるのですが、彼らに使ってもらっても同じようにいいフィードバックをもらえたことで、グローバルな機会をいただけたことが役に立ったなと思っています」

株式会社リクルート HITOLAB(ヒトラボ) 福田 竹志様
「視覚というのは持ち帰ることができないものなので、どうやって印象的なフレーズにまとめるか、というのが勉強になりました。全く見えない人に伝えるには、本当に真摯に、なぜこういうことが必要で、これがどういう関係性になっていて、こういうことを使うとこういう考え方ができるんだよ、と言葉でじっくり話しました」

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